Online UPAF #5 はUPAFから皆さんへの、ひねくれクリスマスギフト。心温まるか冷えるかは、皆さん次第…
いい映画で観るパレスチナの歴史その5
「占領下での現代の暮らし」
Online Screening #5
配信期間:2024年12月22日(日)00:00 〜 23:59
日本初公開!12月22日 1日だけの配信!!!
配給会社の要請により、1日だけの配信です(Teketではその日中に視聴、Vimeo OTTでは、購入後その日中に視聴開始すれば 72 時間アクセス可能)。今回のために日本語に訳しました。絶対にお見逃しなく!他では観られない、とてもおすすめな作品です。
脚本・監督:アミーン・ナイフィー | 出演:アリ・スリマン | パレスチナ・ヨルダン・カタール・イタリア・スウェーデン | 2020 | 96分 | アラビア語 | 英語字幕・日本語バリアフリー字幕付き | 鑑賞券:1100円
西岸に住むパレスチナ人の日雇い労働者ムスタファは、重傷を負った息子のもとに駆けつけたいが、イスラエルが建てた分離壁の向こう側(イスラエル側)に暮らす家族の元へ行くことができない。国境で入国を拒否されたムスタファは、別の方法で壁の向こう側に渡ろうとするが、占領の残忍な不条理が次々に彼を襲う。200メートル先の家族の元へたどり着くための旅は、200キロの長く困難な旅になっていく。心温まるホームドラマと手に汗握る政治的なスリラーを絶妙なバランスで一体化した、パレスチナ映画界の新星アミーン・ナイフィーの長編デビュー作品。
ナイフィー監督は西岸出身のパレスチナ人ですが、分離壁のせいで家族と離れて育ちました。そのため、自由に祖父母を訪ねたりすることができず、祖父が亡くなった時にも駆けつけられず、悲しかったそうです。そのようなパレスチナ人が何千人もいて、この作品は彼の人生を詰め込んだパーソナルな話だと言います。
本作は本当にいい映画なのですが、コロナ禍中に公開されたせいかあまり知られておらず、広く配給されていません。もっともっと注目されるべき作品だとも思います。とても美しい作品ですし、かの有名なパレスチナ人俳優アリ・スリマンの表情で語る演技に絶句させられます。先日ニューヨークのハンターカレッジで上映したのですが、学生も一般の来場者も全員「いい映画だった!」と感銘を受けて、何日もこの映画の話をしていました。アリ・スリマンは、『パラダイスナウ』主演、『トム・クランシー/CIA分析官ジャック・ライアン』にも出演されています(どちらの作品でもテロリスト役ですね…)
ヴェネツィア国際映画祭正式招待、観客賞受賞。ヨルダンのアカデミー賞エントリー作品。インド国際映画祭 ICFT UNESCOガンディー・メダル特別賞。
アミーン・ナイフィー/Ameen Nayfeh
1988年、パレスチナ西岸生まれ。幼い頃は、ヨルダンとパレスチナを行き来して過ごす。若い頃から映画に興味があったが、2010年に東エルサレムの Al-Quds University(アルクッズ大学、分離壁のすぐそばにあるパレスチナのアラブ大学)で看護学の学位を取得。2年後、ヨルダンの Red Sea Institute of Cinematic Arts で映画制作修士号を取得。本作以前の作品に、The Crossing(2017年短編)、Suspended Time / Zaman Muaalaq (2014年ドキュメンタリーのセグメント)、The Eid Gift(2012年ドキュメンタリー)、 The Uppercut(2012年ドキュメンタリー)がある。本作が長編ドラマデビュー作。
[ 監督の言葉 ]
僕にはもう思い出せない記憶がたくさんあるし、それは、そこに戻ることが怖くて思い出したくない記憶なのかもしれません。抑圧というものは、人間の基本的な人権を否定しながら、その人を疎外します。特に、僕らがそれに適応し始めてしまうと、怖い結果になります!
強制的な別離は心に大きな傷を作ります。『200メートル』は、私自身の物語であり、何千人ものパレスチナ人の物語です。そして、物語は人々の人生を変える力を必ず持っています。私は、映画の力、映画が私たちの人生に触れる魔法のような力を信じています。だから、どうしてもこの物語を伝えたかったのです。
パレスチナと聞いて思い浮かぶのは、壁、検問所、そして兵士たちのイメージでしょう。この映画にもそうしたイメージが登場しますが、僕が焦点を当てたかったのは、そういう強制的な分断が人間である私たちに与える影響です。そして、物理的な分離壁が建てられたことで生まれた、目に見えない分離壁にも光を当てたいと思いました。
ここパレスチナで生きる僕らは、新しい苦境に適応すること、言われた通りに行動すること、そして感情を覆い隠すことに慣れてしまっています。しかし、こんなことに慣れるべきではないんです。移動の自由はまったく基本的な人権のはずなのに、僕らが生きる過酷な現実の中では、まるでおとぎ話のように思えます。主人公のムスタファは、家族と共に過ごすわずかな可能性を確保するために、ルールに従い、屈辱に耐え、指示に従ってきました。しかし、彼の人生を疎外してきたその同じルールが家族を危険にさらし、彼の父親としての役割を否定する時、ムスタファはそれに従い続けるのでしょうか?
(本作のプレスリリースに掲載の文を翻訳)