今回のUPAFは、まず2024年9月〜12月にオンラインで開催し、その後2025年1月に岡山市のカフェ「奉還町4丁目ラウンジ・カド」で対面上映を行います。オンラインは、1〜2プログラムを7日間、3週間ごとに開催の予定です。ボランティアと小口グラントだけで運営する小さな映画祭なので、なるべく誰にも無理がかかりすぎずに続けていけるために考えた実験的な開催形態です。ほぼ全作品が日英字幕付き上映、自分達で翻訳するものにはバリアフリー字幕を付けます。
創設当初からのテーマ「生きる・創る・映画」はもちろん大切にしながら、UPAFでは毎回、開催年に世界で起こっている重大な事象や出来事をミニテーマに置き、数作品を集めます。今年のミニテーマには「パレスチナ」です。そのほかにも、日本に住む外国人労働者の多いアジアの国々からの作品を紹介します。2020年から実施の公募から選ばれた日本短編映画の特集もあります。
今回配信する作品の多くが、日本限定公開を条件に配給会社からお借りできていますので、日本からの視聴に限られることをご了承ください。他の国にお住まいの皆さんには申し訳ありませんが、そちらの国では観られるものもあるかもしれません。日本のお友達へのご案内、よろしくお願いいたします!
第10回宇野港芸術映画座は、芸術文化振興基金助成事業と財団法人大竹財団の助成金を受けて実施しています。
スケジュール(随時アップデートします)
第1弾: 9/27-10/3 日本時間
いい映画で観るパレスチナの歴史その1「1948年ナクバ 」
– 『この海の塩』(原題:Salt of This Sea) ディアスポラのパレスチナ人女性が故郷に帰ろうとするドラマ, 105分
– 『LYD』 ナクバで占領されたパレスチナの町リッドの過去・現在・仮想現実の現在を描き、未来を提示するSFドキュメンタリー, 78分
第2弾:10/18-10/24 日本時間
いい映画で観るパレスチナの歴史その2「1987−93第1次インティファーダ」+技能実習生として来日したベトナム人移民の生活を描いたドラマ
-『海辺の彼女たち』ドラマ, 88分
-『乳牛たちのインティファーダ』クリエイティブドキュメンタリー, 75分
第3弾:11/8-11/14 日本時間
いい映画で観るパレスチナの歴史その3「1967第3次中東戦争」+ 中国の農村の1年を追ったユニークな体験的ドキュメンタリー + 日本短編公募入選作品その1の3
-『ぼくに見えた道/When I Saw You』第3次中東戦争が舞台の母子のドラマ, 93分
-『自画像:47km 2020』中国の農村ドキュメンタリー, 190分
-『Reveal Man』独創的な音楽・ダンスユニット IXI のデビュー作品。実験映画、短編(無料!, 6分
第4弾:11/29-12/5 日本時間
セルフドキュメンタリー3選:ガザから日本から。いい映画で観るパレスチナの歴史その4「第2次インティファーダ後の2008-09ガザ攻撃から現代」+ 日本短編公募入選作品その2の3
-『鳥はどこへ飛ぶ』ガザ初の女性ビデオジャーナリストが捉えた2008−09年のガザ攻撃の現実。セルフドキュメンタリー, 53分
-『アフマドは生きている』 ガザのトラベルビデオブロガーのアフマドさんが、昨年10月以降のガザでの自分の生活をスマホで綴った、できたばかりの縦型セルフドキュメンタリー, 37分
-『そんな感じなんだ(so this is what it feels like…)』日本で働いて生きる中国人監督の、作家性あふれる実験映画、短編(無料!), 24分
第5弾:12/20-12/26 日本時間
いい映画で観るパレスチナの歴史その5「占領下での現代の暮らし」+ カンヌグランプリ受賞のインド人女性監督のフィクション・ドキュ・ハイブリッド作品 + 日本短編公募入選作品その3の3
-『200 メートル』西岸地区で占領されて生きる父親の姿を描く、本当にいい映画(配信は1日だけ!), 97分
-『何も知らない夜』モディ政権下で立ち上がった学生たちの闘いと矛盾を詩的に描いたインドのハイブリッド・ドキュメンタリー, 100分
-『いつか、母を捨てる』母から逃れられない娘の哀しみを描くサスペンス。ドラマ、短編(無料!), 22分
対面上映:1/10-1/13/2025 岡山県玉野市宇野港の宇野ポートイン(1/10-11)と、岡山市奉還町4丁目ラウンジカド(1/12-13)にて。
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キュレーターより
今年のミニテーマをなぜ「パレスチナ」にしたかというと、私自身が中東を遥か遠い土地と思って日本で育ったから。中東は、西アジアなのに。私が過ごしたバブル期の日本は、皆の目が西洋に向いていました。その落とし子として、私もアメリカに奨学金留学し、間違いみたいにそのまま居残りました。
ニューヨークに30年以上住んで、15年以上大学で教えてきて、ガザに家族が多くいるパレスチナ人ディアスポラの生徒もいるし、ガザ出身の映画制作者の友だちもできました。多くの家族や親戚を次々に失い続けている彼らにとって、ガザで今起こっていることは、1948年から終わりなく続いている闘いの同一線上にありながら、未曾有の悪夢です。
アメリカの学生たちが、アラブ人もユダヤ人も東南アジア人も黒人も、大人たちの欲にまみれた世の中の不条理を受け入れずに、人生を賭けて闘うのを、間近で応援しながら約一年を過ごしました。自分たちの払う税金が武器に変わりガザの人々を殺すことに反対し、立ち上がっている(特にユダヤ系の)市民もたくさんいます。メディアでは報道されないか、捻じ曲げて報道されるようなことです。
その中で、パレスチナのことを長年気にかけてきた人たちから教わって、パレスチナの映像作品をたくさん観ました。少しは知っているつもりだったのに、自分は何も知らなかったことに気付かされ、パレスチナ人監督たちのクリエイティビティ、才能、ストーリーテリングへの情熱に心を打たれました。一般市民の大量虐殺という面では、被害者であり加害者でもある日本に生まれた私たち。私たちの父母、祖父母、曽祖父母が体験した戦争と、豊かな日本の暮らしは、今私たちが目撃している虐殺とどう関係があるのでしょうか。
パレスチナの歴史を辿りながら、自分たちと今、彼の地で起こっていることのつながりを感じられる作品群を上映します。目をそらしたくなるけれど、そらしてはいけないし、そらさずに観れば、きっとそれぞれの形でつながれて、自分の居場所ももう少し明確になるかもしれません。なにより、パレスチナ映画の質の高さに驚くと思います。そのほか、日本短編やアジアの他の国からの秀作も上映します。ドラマ、ドキュメンタリーなど。皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。
キュレーター/共同主宰 タハラレイコ
https://www.instagram.com/unoportartfilms/
https://x.com/UnoPortArtFilms
https://www.facebook.com/UnoPortArtFilms
スイカと水平線をイメージしたポスターアート:赤田竜一
ウェブサイトデザイン:柳川みよ
共同主宰:タハラレイコ、上杉マックス幸三
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信頼できるパレスチナ・レバノン人道支援寄付先リスト
パレスチナ(医療、教育、食べ物や水):
ガザ:
The Ghassan Abu Sittah Children’s Fund:ワシントンDCが拠点の、ガザの子どもたちの医療支援団体。Ghassan Abu Sittah 医師(イギリスベースのパレスチナ人)の指導のもと、重症の子どもをレバノンの病院に搬送し、治療にあたっている。
MAP – Medical Aid for Palestinians:パレスチナ人のための医療支援。ロンドンが拠点の歴史のある大きな団体。1982年にレバノンのパレスチナ難民キャンプがイスラエル軍の指示のもとレバノンの新イスラエル党の民兵によって襲われ、1300−3500人が大虐殺されたサブラー・シャティーラ事件の際に、そこに残ってパレスチナ人の治療救命にあたったロンドンの医師Swee Chai Angさんがその後ロンドンで仲間に呼びかけて創立。現在はパレスチナ全体の医療支援の他、強制移住反対などの運動も続ける。
Drinking Water and Food Initiative: ガザ中央部の人里離れた村 Al-Zaweideh にきれいな水を届け、ガザ南部のカーン・ユニスの難民キャンプに住む60-80家族に食べ物を届けるプロジェクト。これは、ガザのお知り合いの方々のために活動をしておられるだいじょう部員の、まるさんが推薦してくださいました。
フィダ・キシュタさんの家族をガザから脱出させるキャンペーン:これはUPAFの個人的なつながりなのですが、2015年に上映の『鳥はどこへ飛ぶ』(今回またリバイバル配信&上映予定!)の制作者でガザで最初の女性フィルメーカーのフィダ・キシュタさん(正確な発音はフェダに近いようです、すみません)が、ご家族を救い出そうと必死に資金を集め奔走しておられます。ご両親をエジプトへ救出した直後に、お父様の末期癌が発覚(ガザでは医療が限られているため)、鎮痛剤もないエジプトの病院で先日亡くなられました。お姉さんもイスラエルのラファ攻撃中に散布されたらしき化学物質を吸って嘔吐が止まらなくなり、先月3人の小さなお子さんを残して亡くなりました。かなりの額が集まっているにもかかわらず、仲介人の価格高騰などでまだ10人くらいのご家族を救出できていません。
ヨルダン川西岸地区:
1for3:ヨルダン西岸地区のパレスチナ難民キャンプで、水、食べ物、健康、教育の支援を行っている団体。拠点は米国マサチューセッツ。
FOBZU:パレスチナ難民の教育支援。1978年創設の歴史ある団体。強制移住や戦争の現実の中を生きるパレスチナの若者たちが教育を受け続けられるように支援する。中東諸国、イギリスなどからの活動家や有識者などが支えている。
レバノン
Fundahope:2023年10月以降のイスラエルによる攻撃・侵攻により移住を強いられたレバノンの市民・住民を支援する団体。
Le Secours Populaire Libanais:2024年9月23日以降のイスラエル軍によるレバノンの人的被害は、10/4時点のレバノン保健省の発表では死者2011人、負傷者9535人、100万以上が自宅立ち退きを余儀なくされている。この団体は、医療機器を届け、負傷者を運び、医療や手術を提供し、シェルターや食料の確保にあたっている。
ヨーロッパ・アメリカ法律関係(親パレスチナの表現・言論の自由擁護団体)
European Legal Support Center:親パレスチナ活動や言論への統制によって被害を受けたヨーロッパ諸国の市民・住民(イギリスを含む)に法的アドバイスや支援をするヨーロッパ唯一の団体。2019年に設立。
Palestine Legal Center:親パレスチナ活動や言論への統制によって被害を受けたアメリカ市民・住民に法的アドバイスや支援をするアメリカ唯一の団体。