メル・バックス追悼


メル・バッグスさんは、アメリカの障がい者コミュニティではよく知られる自閉症ブロガーでアーティストです。私は2年前に、生徒が期末レポートとして書いたこの記事(英語)でメルさんの存在を知り、同時に代表作の ”In My Language” (邦題:私の言葉で)の力強さに圧倒されました。CNNでも紹介されたこのビデオは、2007年にYouTubeに載せられて以来、自閉症コミュニティだけでなく障がい者アーティストのコミュニティに広く勇気を与えてきた金字塔的な作品です。UPAFのテーマは「生きる・創る・映画」ですから、ぜひ紹介したいと思い、この夏にMelさんと連絡をとってもう少し大きなサイズの動画をいただくことは果たしてできるのだろうかとググっていたときに、Melさんがこの4月に39歳の若さでご他界されていたことを知りました。いくつものニュースに取り上げられていました。検索結果に、 メルさん追悼の Go Fund Me 寄付サイトがあり、行ってみたら思ったよりあまり集まっていませんでした。ニュースに取り上げられる人物なのに、少しびっくりしました。メルさんの残した多くの作品などの片付けや管理費用のための寄付募集です。そのページを作ったご友人の方に連絡をとってみると、お母さまにすぐにつなげてくださり、大きなサイズの動画はないけれども、日本の皆さんに元気を与えるためならどうぞ、と快く許可をいただきました。そういうわけで、10周年記念の今年、UPFAでは、”In My Language” (邦題:私の言葉で)の日本語字幕を作り、メルさん追悼の意を表してこのページに貼ります。この後も、YouTubeに日本語版で、メルさんの勇気あるメッセージを日本の皆さんにお伝えできればと思います。もしもこのビデオに励まされたら、上の寄付サイトにカンパをお願いいたします。

お母様からのメールには、以下のように書かれていました(許可を得て翻訳・転載)。

「メルは、自分というものが、手足を超えて周囲のあらゆるものとつながっていると感じていました。子供の頃には、日中に星がどこにいるか感じられると言っていました。空間的にものを考える人で、自分を取り巻く時間も感じることができました。自閉症を、他の人とは違う方法で物事とつながっていることと捉え、すべての人に価値があり、リスペクトと平等な権利と機会が与えられるべきだと考えていました。このビデオは、”手話で歌う ろうの人々”や、周囲と同じ言葉を話せない子どもたちなど、コミュニケーションの方法が”普通でない”ために相手にされないすべての人のために、メルが作った作品です。」

「メルはまた、自分を無性別と定義していました。”誰にでも分かる言葉だし、面倒くさくないから好き。両性とか無性別っぽい特定のXジェンダーいう意味ではなくて、単に性別がないということ。”とブログに書いています。友達の容姿や性別には一切興味がありませんでした。友達の内面だけを愛し、あとはどうでもいいようでした。子どもに新しいお友達は黒人なの白人なの、と尋ねた親の話を思い出します。その子どもは、分からないから見てくると答えたそうです。子どもの時、もし私が新しいお友達は女の子か男の子か尋ねていたら、メルもきっと同じことを言ったでしょう。どうでもいいことだったでしょうから。」

「バーモント州バーリントンの医療システムに障害者差別がなく、メルの通っていた診療所が昨年突然に閉鎖されていなかったなら、メルは今でも生きていて、詩やアートや映画をつくり、皆を励まし、自閉症の研究に貢献していたでしょう。」

R.I.P. メル・バッグス (1980年8月15日〜2020年4月11日)